サッカーボール

 既にW杯制覇という偉業を成し遂げたサッカー女子日本代表「なでしこJapan」、実はアジア杯を征したことがなかったんですね。 海外組を招集できないしW杯に向けた育成や調整が主眼となるこの時期、それなりの背景があったのかもしれませんが、こと女子サッカーにおいてアジアは強豪揃いであることも確か。 今年のアジア杯は、しかしながら、ドタンバで勝ち上がり、最後もギリギリで勝利。 ドタンバ・ギリギリ、なでしこたち独特の強さかもしれません。

 さぁ、続いてはブラジルW杯です。 男子代表はどんなドラマを見せてくれることでしょう。 前回の南アW杯では、これまでとは一風変わった「ジャブラニ」という公式球が使用されました。 空中で軌道の変化が激しく、キーパー泣かせのボールでしたね。 今回は「ブラズーカ」という公式球なのだそうで、いろいろな改良工夫が加えられているようです。

 そうはいっても、サッカーボールといえば、オニギリカラーの切頂20面体を連想しますよね。 黒の五角形12面と白の六角形20面からなるあのボールです。 どんなにボールが進化しても、洋の東西問わずサッカーのシンボルマークのようになっていますね。 あれこそサッカーボールなのではないでしょうか。 けど、そういえば、大昔のサッカーの写真には、まるでバスケットやバレーのような縫い目のボールが写っています。 ということは、いつからオニギリになったんでしょうか。 調べてみました。

 あのオニギリボールですが、歴史は案外浅く、1970年W杯メキシコ大会の公式球「テルスター」が原型のようです。 ドイツのアディダス社製でした。 しかし、意外と知られていないのですが、この形を編み出したのは日本なんですね。 1960年代に日本のモルテン社がハンドボール用に開発した切頂20面体のボールをサッカーボールにも転用、これが人気を呼び、アディダス社からOEM(相手先ブランド名製造)を受注。 アディダス社とモルテン社のOEM関係はその後も続き、上記の「ジャブラニ」や「ブラズーカ」も、アディダスブランドではありますが、設計・生産はモルテン社にアウトソーシングされているようです。

 二昔前くらいは、サッカー不毛の地、サッカー後進国と自他共に認めていた日本ですが、意外にも、近代サッカーの重要な裏方を務めてきたんですね。 ですから、男子代表のニックネームも、「サムライJapan」とか言わずに「モノヅクリJapan」とかにしてほしかったところ・・

 それにしても、サッカーなど特にですが、このボールというのは厄介なものです。 思ったところに行かないし、勝手に転がって行くし、なにせ球体ですから、なんとも掴みどころがない。 けれど、子どもらは大好きです。 少年サッカーコーチであった泉優二氏は、著書の中で「サッカーだけがボールが子どもを待ってくれるスポーツ」と評されています。 貧しい少年時代を送ったアルゼンチンのカルロス・テベス選手は、世界クラブ選手権で来日したとき、あなたは何故ボールを失わないのかとのインタビューに、「僕にとって、ボールを失うことは全てを失うことなんです」と応えています。 ファンタジスタと賞されたイタリアのロベルト・バッジオ選手は、自伝の中でこう訴えています。 「忘れないで欲しい、君たちの足下には永遠にサッカーボールがあることを」。


ボールというモノは
いったいナニモノか


--- 2014/5/28 Naoki



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