オフットサル


「さと」のレゲエ

 毎日毎日12時です。 それも気が気でない12時。 墨田に来てから良く聞く言葉は、「怒られる」、「お仕置き」はよいとしても、「クビになる」、「刺される」、「殺される」、「隅田川に浮く」。 もちろん全部洒落なんだろうが、洒落とも言えぬご時世で、精神的に追い詰められながら深夜まで働くのです。 真面目な人なら総白髪になって胃に穴をあけて失踪して首でも吊るわけですが、幸か不幸か僕は不真面目なので日々飄々と暮らしています。 不真面目というのは才能かもしれない。

 皆さん終電に飛び乗ってご帰宅あそばすが、僕は寮に潜り込んでいる関係上、青天井で働くことができます。 家族には申し訳ない。 やれ蛍光灯が切れたとか、疲れたとか、今日も愚妻からビデオデッキがレンタルビデオを喰って離さないという電話があり指導したばかり。 そりゃあ、僕よりも遥かに家族の方が頑張っています。 僕はと言えば、どんなに遅くなっても飲んで帰る。

 通っていたころは、曳船、浅草が主でしたが、寮の一室を占拠してからは東向島のチンマリした店を転々。 ところが、商店街といい、飲み屋といい、夜が早いものだから、24時間営業のファミレスで飲んで帰るようになりました。 深夜といい、休日といい、訪れる僕に「デニーズ」の店長は感心した模様。 とはいえ、20代後半の好青年と思しき彼も早朝から深夜まで働いているわけで、「あんたの方が凄いじゃないの」と言ってやった。 和風レストラン「さと」でも妙に顔見知りとなってしまい、今日は店長らしき人物が、「申し訳ありません、お先に失礼致します」と挨拶に来ました。 最初は冗談だと思ったのだけれど、目がマジなので、どうやら彼は僕をよっぽどの苦労人と見ているらしい。

 しかし、深夜に「さと」を訪れるのは、和食で一杯やりたいのもありますが、何故かレゲエが掛かっているから。 なぜ和食にレゲエかは高尚な経営戦略の結果であるらしく不明ですが、ホロリとしたいときは劣悪なポップスやムード音楽よりも気が利いている。 レゲエはジャマイカの大衆音楽で、ボブ・マーレー、ジミー・クリフ、サードワールドなんかが僕の世代のアイドルになりましょう。 ジャマイカは元英国領ですから、イギリスの各地にジャマイカ人のゲットー(部落)があった。 ボブ・マーレーもイギリスに留学していた経験があるはずです。 なので、ビートルズ、ローリングストーンズ、レッドツェッペリンなどブリティッシュ・ロックでお馴染みのイギリスも、1980年代はレゲエが流行った。 スティング率いる3人組のロックバンド「ポリス」は、その影響を直に受けながら、独特の世界を築きました。 ちょうど、エリック・クラプトンがブルースに糧を得ていたように、ポリスはレゲエというパブリックドメインから養分を得ていた。 そしてやがては、ジャマイカの連中がポリスをカバーするようになった。 レゲエのリズムに乗せて「さと」に鳴り響く "So Lonely♪ So Lonely♪ So Lonely♪" の如何に快いことか。


オフットサル

  そんなおり、インターネットのサッカー掲示板で、オフ会をやろうという話が持ち上がりました。 楽しそうなのでフットサルを企画した。 オフ会フットサル、名付けて「オフットサル」。 集まったのは、東京、埼玉、千葉、神奈川のガキンチョ連中とサッカー少年団のコーチや保護者。 一期一会、ほんの2時間の付き合いだったのに、如何に楽しかったことか。 そして、小学2〜6年生のガキンチョどもの、如何に魅力的だったことか。

 即席チームを組み、初めての仲間たちと戦ったのだけれど、彼らはあっという間に打ち解けあい、世界を共有していました。 挙句は、「なんでパスよこさないんだよ!」、「なんでパスしなきゃならないんだよ!」とピッチ内でサッカー談義。 口論しながら、ガンガン戦っています。 なんと頼もしい連中だろう、10歳やそこらだよ?  最後の最後、埼玉の4年生だけがゴールを決めていませんでした。 彼はとても果敢にアプローチするのだけれど、いざというとき腰が引けてしまっているようでした。 オトナ対コドモで、オトナが3点入れる前に彼がゴールしたらコドモの勝ちと定めると、それまで執拗に得点王を争っていたガキンチョどもはすぐに適応。 埼玉君に立ち位置を指示し、パスを供給し、遂にはオトナチームを撃破。 埼玉君にとっては、生まれてはじめてのゴールだったらしい。 でも、彼は満足していませんでした。 彼は、皆に「入れさせてもらった」というそのゴールより、外れたけれどコドモ対コドモ戦で狙ったグラウンダーのクロスシュートを初めてのチャレンジとして心に刻んだようです。 なんと頼もしい!

 その後、表彰式やら何やらで盛り上がり、クラブハウスの人から注意される始末。 でも、このほんの2時間で、リュウ、ケイ、ミサワ、ジミ、ツバ、マルチン、ケンタロウ、タクヤ、彼らが大好きになってしまいました。

これが第1回オフットサルのオールスターキャストです  

夏の箱根

 とまぁ、そんな夏の暇を突いて、家族を箱根へ連れて行ったわけです。 愚息は、いつまで旅行に付いてきてくれるだろう。 彼の携帯電話がひっきりなしに鳴る。
「パケット代が掛かるから、友達にメールは日に1回にしろって言っとけよ」
「ガールフレンドができたから無理だよ」
「じゃあ、ガールフレンド捨てよう」
「それはない」
彼は携帯電話をデジカメ代わりに湿生花園の花々を次々と接写して土産代わりとしているようでした。 変わりやすい高原の空に分厚い夏の雲が垂れ、時折強烈な日差しが草木を彩るお天気雨の中で、彼の傘は花のようでした。

高原のお天気雨と緑と軽快なステップ  

--- 14.Jun.2002 Naoki
--- 15.Aug.2002 Naoki

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