タイムラグ

 先月末、大学時代の軽音楽部OBによるコンサートに参加させていただきました。 佐久間君という同期(人生的には先輩)が主催し、奥さまと共に並々ならぬ調整と準備を経て企画・主催してくれているコンサートです。 尋常な勤勉さと忍耐力では成し得ないことを、単身赴任でご夫婦別居(遠距離恋愛?)且つ大病を克服して実現してくれたのですから、ひたすら頭の下がる思いです。 ですから、佐久間君とは余程優しく生真面目な人物だと思われるでしょう。 しかし、自分が知る限り、彼は埼玉の暴走族の出で、同じ大学に通っていたとはいえ、普通に考えれば危険人物、近寄り難い存在でもありました。 その彼と奥さま(こちらは暴走族ではない)がこんな企画を何回も実現してきたのですから、人間というのはわからないものです。

 参加者は、一寸先輩から一寸後輩まで十歳近い開きがあり、且つご自分の娘さんだとか、あるいは会社の同僚の娘さんだとか(ま、娘さんばっかりですが)も含めると、三十歳前後の開きがあります。 それでも、こと音楽となれば体育会系のような上下はなく、各々互いの演奏を堪能し、あるいは聞いてもらえることで、一丸となった時間を満喫することができます。 中には、数年ぶり、十数年ぶり、あるいは数十年ぶりに再開する人物もいて感慨無量。 面白いのは、音楽を演っているとそうなるのか、あるいは音楽がそう見せてくれるのか、皆、あんまり変わってないんですね。 この人誰だっけ、といった輩が一人もいない。 そりゃあ、禿げたり、白髪頭になったり、皺が増えたり、所々弛んだりはしているのでしょうけれど、明らかに同じ人物、何の違和感もないというところが不思議といえば不思議。

 前回、その中に一人、三十余年振りに再開した男がいました。 現役当時、彼はプログレ(前衛的ロック音楽)でキーボード(鍵盤楽器)を演奏していました。 残念ながら同じバンドになることはありませんでしたが、腕は確か、同期ながら憧れの存在でした。 その彼から、いきなり「ゴメンね」と声をかけられたのです。 卒業後、彼は某大手電子機器メーカーに就職し、しかも当時花形だったシンセサイザー(楽音を合成する電子楽器)の研究開発に携わりました。 それを知った自分が、何やら生意気に手紙でリクエストしたらしいのですが、結果的に一方通行となり、後年彼は他の一流電子機器メーカーにスピンアウト。 そんな顛末があり、生意気なリクエストを放置してしまったことへの詫びのようです。 とはいえ、そんなこともあったのかなとコンサートに没頭し、楽しい一日を過ごすことができました。 当日、彼はシンセサイザーではなくアコースティック・ピアノを演奏、ジャジーで本格的で、改めてその才能を再認識した次第です。 そして終会、解散と相成ったわけですが、後日、その彼から便りをもらいました。 こちらです。

戴いた便り

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 そこで、こんな返信をさせていただきました・・  


 キョンちゃん(と、昔の綽名で呼ばせてください)

 ルースターではゆっくりお話もできず失礼しました。 けれど、またお目に掛かれて嬉しかったです。 個人的に同窓会は苦手で、小中高あわせて2,3回しか出てないんです。 懐かしいんだけど居心地が悪いというか、妙に疎遠な気持ちになっちゃう。 けど、佐久間くんから招待されたこの企画には、もう4回目かな? やっぱり、音楽が皆をもう一度結び合わせ、溶け合わせてくれるというか、 音楽はいつも現在進行形ですからね。

 モニター試用の件、気に掛けて頂いていたというだけで光栄です。 音楽の演奏者として認めて頂いていたように感じられるからです。 あの当時、シンセサイザーというのは無限の可能性を感じさせてくれました。 そこで、MSXパソコンの4オペレータFM音源でデモテープを作り、 FM7やM1を経て、宅録にはAKAIのサンプラーを駆使しました。 音源媒体はクイックディスクというFDD以前のショボい代物で、 やがて役目を終えて友達に引き取られて行きました。 かくしてKB類は皆無の状態。

 役目を終えた背景には、もはやバンドが組めなくなったという事情もありました。 せっせと宅録をしたり、自分だけでは出せない音を探る必要もなくなったのです。 当時出向していた勤務先の近くに多摩川上水があって、昼休みにトボトボ散歩しながら、 どうせバンド組めないんなら音楽活動なんてやめよう、と自分に言い聞かせたものです。 その上水沿いには、武蔵野の自然な森が細々とではあるけれど残っていて、 名も知らぬ花が咲いてたり、虫が飛んでたり、鶯なんぞが鳴いたり、 いろんな木々も茂っていて、風が吹く度に葉擦れの音を奏でたり・・ で、ふと気が付いたんですね。 こいつらみんな明日の事しか考えてないよな、って。

 それからです、弾き語りを始めたんですよ。 若い人たちに混じって四十面さげてライブハウスのオーディション。 手が震えたの覚えてます。 最初に弾く弦を間違えてやり直させてもらったり、 オマエ何年ギター弾いてきたんだよと自分に呆れました。 それからだんだん歌の面白さを再認識するようになったような始末。 やがて、デュオとかトリオの弾き語りができるようになり、 今回はこうやってカルテットですよ、 多摩川上水から始まったんだから、タマガワカルテット!

 せっかくキョンちゃんに再会できたんだから、いつか共演しましょう。 アコースティックピアノ、素晴らしかったです。 無限の可能性を期待していたシンセサイザーに勝るとも劣らず、 アコースティックな楽器にも無限の可能性があるように感じます。

 懇切丁寧なPDFのお便りを戴いたお礼にもなりませんが、 マイHPに掲載している拙作エッセイを一つ添付してみました。 器楽音に関する浅はかな思いを綴ったものですが、ご笑覧いただければ幸甚。 もしよかったら、キョンちゃんのお便りもマイHPに掲載させてもらえるかしら。 誰が見るHPでもないですが、マイ記念館のようにしておきたいので・・ (デジタル終活は未だ始めておりません)

 長文、乱文失礼しました。 お便りのお礼に代えて。


--- 2018/7/17 Naoki


久々に旧友達と4人編成のバンドを実現。
粗削りながらも不思議と若々しい演奏に。

老若男女の有志が即興でヒット曲を合唱。
先輩ご新調のブルースハープに合わせて。

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